【ナポリ編】ビスポークテーラー奮闘記⑫

意外な縁で巡り合ったサルトリア

 

ナポリで住んでいたシェアハウスの大家さんは、30〜40代くらいの英語が話せるイタリア人でした。

「困ったことがあったらなんでも言ってね」といつも声をかけてくれる、とても親切な大家さんです。


以前、世間話をしていた際に「なんの仕事をしてるの?」と聞かれたのでサルトの仕事をしていると言ったら、その大家さんの祖母が元々サルトだったと話してくれました。

そんな何気ない会話から大家さんはなんと、荒川のためにナポリのサルトを探してくれていたのです。
さっそく休みの日に紹介してくれたサルトと会ってみることにしました。

大家さんが紹介してくれたのはアンナという女性でした。

アンナは偶然にも今住んでいる家の近所に住んでおり、以前Kitonの学校に通っていた元生徒でした。

共通点も多く、話も弾み、すぐに仲良くなれました。

アンナが働いているサルトリアで一緒に働かないかということで、是非とも働かせてもらうことにしました。

そのサルトリアこそが「Sartoria volpe(サルトリアヴォルペ)」でした。

 

 

Sartoria volpe(サルトリア ヴォルペ)

 

サルトリアヴォルぺに出勤する際は、その日の朝にアンナに連絡をするとバイクで迎えに来てくれます。

歩くと1時間くらいかかるのでとても有り難かったです。(それでもたまに散歩がてら歩いて出動することもありました。)

出勤初日には、オーナーのジョバンニ・ヴォルペが出迎えてくれました。

「クロワッサンとカフェいる?」と聞いてくれたので喜んでいただきました。

その後も出勤の度に聞いてくれるので、サルトリア ヴォルペに行く日の定番の朝食になりました。


ここでは20代のサルトが沢山働いています。

若い職人たちが楽しそうに働いているのを見て、荒川も気持ちが高まりました。


《ワイルドなアレッサンドロ。若い職人は色んな雰囲気の人がいます。》

《1番仲良くなったアントニオ。 色々と指導してくれました。荒川が作ったスーツも褒めてくれました》

 

言葉の壁を超えた技術指導

 

とりあえず、まず1着作ってみようと言われましたので早速作っていくことに。

実はお店の真ん前に日本でも有名な生地のマーチャント、Caccioppoli(カチョッポリ)の本社があるのです。早速そこで生地を調達して作ることにしました。

 

技術指導は、ロベルトから教わることになりました。

このロベルトは滑舌が悪く、他の一緒に働くイタリア人ですら何を喋っているかわからない、という大ベテランのおじいちゃんです。

まず英語は通じませんし、まだイタリア語が完璧には理解できない荒川は、ロベルトの身振り手振りで指導内容を理解していました。

言葉を介さずとも通じ合っているロベルトと荒川。
他のメンバーにとって、その様子がとても不思議で面白かったようでした。

その後、仲間内で「俺たちがロベルトの言葉が理解できなかった理由は、ロベルトが日本語を話していたからだ!」とちょっとした笑い話になっていました。

 

《ロベルトは朝から夜まで一日中仕事をしています。笑顔も魅力的です》

 

歓迎の味わい


出勤初日のお昼にはちょっとした歓迎会を開催してくれました。

場所は山奥のリストランテ。

森の中の湖のそばにあり、とても締麗な場所でした。
場所的にも観光客はあんまり来ないだろう、地元の名店なのでしょうか。もちろん料理はとても美味しかったです。

特に感動したのが、ザリガニ(スカンピ)のパスタです。
日本でザリガニと言うとあんまり食べたいと思いませんが、実際には手長エビのことです。
トマトベースのパスタの上にそのまんまの姿で盛り付けられたものがドーンと出てきます。
これがとても美味しくて、イタリアに来た際には必ず食べるお気に入り料理となりました。

歓迎会でのみんなとの会話で、日本人の職人がここに働きに来たのは荒川が初めてだと言われました。

突然訪れたにも関わらず、暖かく迎え入れてくれてとても嬉しく思いました。



こうして平日Kitonへ、土日はサルトリアクオモ、もしくはサルトリアヴォルペにて働くことになりました。

 



続く。

(この話は2016年頃のことです)

 

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