【ナポリ編】ビスポークテーラー奮闘記⑪

スパッカ・ナポリの職人

 

 

Kitonの師匠・チーロは、Kitonで働きながらチーロの息子さんが営んでいる「Sartoria Cuomo(サルトリア クオモ)」を手伝っています。

Kitonは土日休みのため、休みの日はこちらのお店で働かせてもらうことにしました。

サルトリア クオモは、スパッカ・ナポリに位置します。

スパッカ・ナポリとは、ナポリの旧市街と新市街を分けている通りのことです。ショッピング街で、いろんなお店が並んでおり観光地としても人気のエリアですが、あんまり奥深くまで行ってしまうと少し治安の悪い地域です。

実はこのエリアには腕の良い職人が沢山いるらしいのですが、看板も出さずにひっそりと仕立て屋を営んでいるため、見つけるのは困難とのこと…。

 

《スパッカ・ナポリ、旧市街地》

 

そんなスパッカ・ナポリの、腕の良い隠れた職人の1人が、チーロの息子さん・ヴィンチェンツォです。

とはいうものの、その輝かしい仕立ての腕前は隠し切れず、ロンドンでトランクショーをしたり、有名なファッショニスタのスーツを作ったりしている売れっ子テーラーです。

 

 

Sartoria Cuomo(サルトリア クオモ)

 

 

お店は「Palazzo Serra di Cassano(パラッツォ・セラ・ディカッサーノ)」という貴族の宮殿だった歴史的な建物の中にひっそりとあります。

 

《建物の中は広くて、とても見応えがあります。》

 

この建物の一室にサルトリア クオモがあります。お店の中は洞窟のような作りになっており、とてもお洒落です。

 

《サルトリア クオモの入口》
《お洒落な店内。ディスプレイの一つ一つにセンスを感じます。》
《左下に小さいチーロの人形がいます。》
《店内で作業するチーロ》

  

Kitonでは、ラグジュアリーなナポリ流の仕立て方を学んでいるのですが、ここ、サルトリア クオモで学んだことは「これぞ、ナポリのサルト」というものでした。

 

 

「ナポリのサルト」とは

 

 

ジャケットやパンツを作る時、ヴィンチェンツォは型紙を使わずに、生地に直接、型を描いていきます。頭の中に型紙があり、それを手で再現するのです。

ナポリの仕立ては芸術(Art)です。

仕立ての作り自体を細かく見ていくと決して綺麗とは言い難いです。しかし、それこそが「美」なのです。同じものを何度作ったとしても、ひとつひとつが唯一無二のものとなることが「ナポリのサルト」なのです。

メジャーも使わない、定規を使わずに直線も手で引く、アームホールすらフリーハンドで描いていく。もう体がラインを覚えているのでしょうか。

 ナポリに生まれた人は生まれた瞬間から芸術家なのだと思えるほど、そのセンスは超越されており、言葉では言い表せない雰囲気や空気感を作り上げます。

これがナポリの素晴らしい文化を作っていった血統なのだ、と思えるほどその技術に感動しました。

 

その感動とは裏腹に、このナポリの血統に荒川は苦しめられることとなります。荒川にとって「ナポリのサルト」をマスターすることは容易ではないものでした。

果たして、荒川に「ナポリのサルト」のコツを掴める日は訪れるのでしょうか…。

 

 

初めての体験

 

 

ある日、伸びてきた荒川の髪の毛を見かねたチーロが、行きつけの理容室に連れて行ってくれました。

《人気の理容室、EMPORIUM》

 

そこはナポリでも人気のお店らしく、次から次へとお客さんが入っていきます。

そして、皆カッコよくなってお店を後にしていく…。

《店内は満席でウェイティングの方も沢山います》

 

 サイドを刈り上げ、頭頂部の毛先を撫で付けたスタイル、名付けてナポリカット(荒川が命名)。

《もちろんヴィンチェンツォもナポリカット》

 

ナポリの男たちはこのスタイルが基本のようで皆このヘアスタイルにしています。

折角なので荒川もナポリの男たちを目指して、いざ、ナポリカットに…!

 

 

 
《仕上がりはこちら》

 

 

仕上がりを見た美容師さんも、おそらく違和感を感じていたと思いますが、「すごく良いね!」と褒めながら、逆立った毛先を無理矢理ワックスでセットして終了。

残念ながら、やはり毛質が全く違うため同じような仕上がりにはならず…。

どうしようかと思いながら迎えた月曜日、Kitonに行くと…

 

まさかの良い反応!みんな「Bello」と褒めてくれました。

真偽の程はわかりませんが、みんなのポジティブな反応のおかげで一安心。

そんな初めてのナポリ理容室体験でした。

 

 

 

続く。 

 

 

1件のコメント

  • 楽しくブログ読ませていただいております。
    現在、わたしも夢であったイタリアローマでサルトの修行をしています。
    奮闘記を励みにして頑張ります。

    サクレオ

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