【東京編】ビスポークテーラー奮闘記⑥

日本のテーラリング

 

日本のビスポークを学ぶために、知り合いを通じて、東京のビスポークテーラーを紹介してもらいました。

 

日本のテーラリングは、日本独自の技術が発展しています。

型紙のひき方は、計算を重視して作成。胸のサイズを基準に、割合を計算してそれぞれのパーツをサイジングしていきます。日本人に合うサイズバランスの計算式があり、それに寸法を当てはめていくのです。それにより、プロポーションが整った服が出来ます。日本人の体型は欧米人とは違うため、体を服に合わせていくような手法が取られているのでしょうか•••。

昔は日本人テーラー達が集い、勉強会がたくさん開かれていたと聞きました。派閥もたくさんあり、あーでもないこーでもないとみんなで話し合っていたことが想像できます。

日本人とイギリス人では人種が違うため、教えてもらった通りの仕上がりではカッコよく着こなせない。しかし、この素晴らしい洋服を日本人の体型に合わせるため、先人達が知恵を振り絞って今の日本のビスポークが出来上がったのでしょう。

何にしても、異国の服である、スーツというものをより良く日本人に馴染ませたいと、悪戦苦闘しながら改良してきた先人たちの技術と努力を感じます。

 

日本のテーラー技術は、ボタンホールの作り方が微妙に違うなど、細かい点で異なるものもありますが、1番の特徴として思った点は、日本人は几帳面だということ。

内側の見えないところまでしっかりと縫っていたり、ステッチを細かく入れていたり、本当に手先が器用だと思いました。

イギリスでの修行中、誰にも見えない細部を丁寧に縫っているテーラーを見たことがありませんでした。

作る上での優先するべき箇所が違うのでしょう。お国柄もあるかもしれません。

仕上がりの綺麗さを重視することは、日本のビスポークの特徴のように感じます。縫う前にパーツを糊でくっつけて固定してから縫っていくなど、こういう手法もきれいに縫いたいことが伺える技術だと思いました。

細かい部分や見えないところもしっかり丁寧に作り上げていくのは、とても日本人らしい作り方だと思います。

日本のビスポークは今アジアで人気がありますが、そういうところも魅力的に感じるのかもしれませんね。

 

そんな日本のビスポークの心を学び、またひとつビスポークの魅力と技術を深めることが出来たと思います。

 

 

パターンオーダースーツを学ぶ 

 
突然ですが皆様、「パターンオーダースーツ」と言うものをご存知でしょうか?

オーダースーツにも種類が色々あるのです。

ビスポークは、お客様の体を測り、その寸法を元に「型紙」というものを一から自分で作成します。

生地・芯地を型紙に沿ってカットし、自分の手で縫い上げていきます。初めから終わりまでハンドメイドです。オーダーしたお客様の、世界に1つだけのスーツです。

パターンオーダーの場合は、既製のサイズ見本が用意されており、お客様の体型に一番近いサイズを選んで、長さや幅の調整指示をします。中には肩の傾斜(撫で肩・怒り肩)や猫背などの体の特徴に合わせて補正することができるものもあります。縫製は工場で行われます。

 

その当時、荒川が知らなかっただけかもしれませんが、補正も入れられるパターンオーダースーツというものは日本だけにしかなかったと思います。

幅広くオーダースーツのことを知りたいと思った荒川は、パターンオーダースーツとはどんなものかを学ぶため、専門店で働いてみることにしました。

 

パターンオーダースーツはビスポークよりも、必要となる採寸箇所が限られています。その分、特別な技術がなくても、ある程度知識があればどんな人でも採寸できるのです。

 

ところで、スーツの構造を熟知したビスポークテーラーが採寸するパターンオーダースーツは、それはもう採寸のクオリティが高いものが出来上がるのでは?

と、思いませんか?

 

実際には、オーダースーツと言えどもパターンオーダーとビスポークでは、全くの別物だったのです。

 

1番の違いは補正でした。

 

パターンオーダーの補正は、工場独自のやり方があり、補正を入れる位置や量にも決まりがあります。 

ビスポークで入れる際の補正のやり方や箇所と全く違っていたのです。 

補正とは本来、その一人一人の体の特徴に合わせて入れるものです。その人に合わせて正しい補正をしなければきれいに仕上がりません。工場が決めた補正の具合に合えばいいですが、みんながみんな合うわけではありません。 

やはりオーダーと言えども工場生産では、細かい点で量産の枠を超えることが出来ないということです。 

この点がオートメーションとハンドメイドの大きな違いだと思いました。

 

パターンオーダーでも納得できるスーツを、ビスポークテーラー目線で評価した時、辿り着いた答えは「何も補正を入れない」ということでした。

元々パターンオーダースーツの型紙は良くできていて、だいたいが日本人の体形に合いやすいパターンを使っています。なので、補正を入れなくてもきれいに仕上がる場合が多いのです。

もちろん工場の補正でも、それなりにお客様の体型にフィットしたスーツは出来上がります。しかし、ビスポークテーラーであるが故に細かいところが気になるのです。偉そうに評価と言いましたが、ただ一方的に気になっているだけです。 

気になってしまうなら無理に補正を入れない!パターンオーダーとはこういうものだと、これが1番納得のいく仕上がりになったのです。

 

 

接客を通じて

 

お客様に、より着心地良く、より美しく、満足してもらえるスーツを提供したい。そんなビスポークテーラーとしての希望を込めて働いていました。

その思いが通じたのか、入社して早くから顧客様もつき、とてもありがたく思っていました。

イギリス時代は師匠の下請けのような仕事が多く、接客をする機会はありませんでした。

作っているだけではわからない、最前線で直接受け取るお客様の喜びや悩み。これは作り手にとってとても大事な情報であり、これもまた”ビスポーク”だと気付きました。

 ビスポーク(Bespoke)の言葉は、英語の”be-spoken”に由来しており、「話し合う」という意味があります。

お互いを知り、自分を知ってもらう、そしてご要望を汲み取ってこそ良いものが出来上がるのだと、接客の経験を通して知る事ができました。

接客業なら当たり前のことかもしれませんが、職人としての仕事しか知らなかった荒川にとってはとても大切な経験となりました。

  

  

続く。

(2013〜2015年頃のお話です)

2件のコメント

  • ご覧頂いた体型で、中1の制服から、別注(笑)オーダーでした。
    既製服は、上着以外。
    一時期はA4補正〜AB4補正の時期もありましたが。
    初めてのリクルートスーツは阪急だか、阪神のイージーオーダーでしたね。
    グレイフラノ、アイビー2型だたかと。
    再就職のスーツはパターンオーダーでリーズナブルなエフワンで。冬はグレイとネイビーブルーペンシルストライプ、春夏は白黒グレナカートチェックです。
    もう退職して背広を着ないですねえ。

    ビスポークの語源や
    オーダーメイドスーツのこと
    感じ入りました。
    また、ゆっくりと何回もお話したいです。
    洋服、英国のこと。

    島 雅昭
  • ご覧頂いた体型で、中1の制服から、別注(笑)オーダーでした。
    既製服は、上着以外。
    一時期はA4補正〜AB4補正の時期もありましたが。
    初めてのリクルートスーツは阪急だか、阪神のイージーオーダーでしたね。
    グレイフラノ、アイビー2型だたかと。
    再就職のスーツはパターンオーダーでリーズナブルなエフワンで。冬はグレイとネイビーブルーペンシルストライプ、春夏は白黒グレナカートチェックです。
    もう退職して背広を着ないですねえ。

    ビスポークの語源や
    オーダーメイドスーツのこと
    感じ入りました。
    また、ゆっくりと何回もお話したいです。
    洋服、英国のこと。

    島 雅昭

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